国立劇場第二十五回雅楽公演は,昭和五十二年二月盤渉参軍の「序」の再興初演につづいて,「破」が再興,演奏された。
「盤渉参軍」という曲名の由来は,「唐楽の盤渉調に組み込まれて成った楽曲」であろうといわれている。その譜は,源博雅が書きのこした「新撰楽譜」―通称「博雅笛譜(はくがのふえのふ・はくがのふえふ)」「長竹譜」などである! ただ一つあり,今回の再興もこれを手がかりにされた。
 この公演のねらいについては,次のようにいわれている。
 雅楽の演奏形態は明治以降になって「かつて堂上貴族が御遊で自ら演奏を楽しんだ音楽から,園遊会などの場で要問の楽人が演奏して貴紳にに聞かせる音楽へと移行」する。さらに『明治撰定譜』が作成されたが,「これは御郷遊のための音楽」が基本になっており,自らが楽しむ音楽であって,演奏を聴いて鑑賞する園遊会の音楽ではなかった。今日,雅楽は芸術委音楽として鑑賞される音楽であるから,御遊のための曲を集めた『明治撰定譜』からの演奏ではズレが生じるということになるのである。
 そこに『明治撰定譜』以外の,いわゆる遠楽(えんがく)の意義を見いだし,その再興を試みられたのである。
 そこには,種々の問題があるがその点については,また改めて考えてみたい。
長秋竹譜に拠る盤渉参軍  国立劇場第二十五回雅楽公演
雅楽部報 《昭和54年3月26日 第12号所収》
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